高橋弘子第9回個展 『the receptor is wavering』


9th solo exhibition”the receptor is wavering”

会期:2016年12月1日(木)〜2016年12月30日(金)
会場:Bar&Gallery卍(札幌)

from Dec.1 to Dec.30,2016
Venue:Bar & Gallery MANJI(Sapporo City,Hokkaido,JAPAN)

 テーマを決定するにあたって、当初「テーマは地獄ではどうか」というお話をいただくとともに書籍をお借りしました。『往生要集』という本で、仏教の八大地獄の紹介に始まります。八大地獄においては生前に犯した罪の種類によって行く地獄と受ける刑罰が変わります。それ
はあたかも、生きている間に自分のしでかした悪い行いがいつか「自業自得」となって自分の身に降り掛かってくるのと同一であるかのようです。
 「生きている間に悪い行いをしないこと」の抑制として子供の頃からしばしば地獄のことは耳にしますが、だからといってそう簡単に悪い行いを止めることはできないのが人間ではないでしょうか。悪いと分かっていても、何かしらの理由でその悪い行いに固執し、時にはその固執をなんとか切り離そうと戦う、その繰り返しのなかで生きているように思われます。そこには、あらゆる煩悩が強く働いているように見られます。
 インド神話の神鳥ガルダを前身とする仏教の守護神・迦楼羅天は、炎を吐いたり、自分自身が炎となって、煩悩を焼き払います。一方、私たちは神鳥でもなんでもなく、日々働いて生活している普通の生き物に過ぎません。そうであるのに、自分の煩悩や固執といった、自分の思いが作り出す怪物と戦わなければなりません。また、時にはすでに切り離したはずの煩悩や固執に心惑わされることもあるでしょう。waveringは「(炎などが)揺れている」という意味です。receptorは本来「受容体」などを意味しますが、今回は「常に周囲の刺激や影響を受け止める、
私たち“人”そのもの」を表す言葉として起用しました。
 次の瞬間、次の日、次の年に行く時のそれらの門をくぐるにあたって、私たちはどの煩悩や固執を自分の手元に残し、どれを切り離して捨てるのか、常に選ばなくてはならない、むしろ無意識にでも常に選んでいるのだと思います。
 2016年もほどなく終わり。次の年に向けて、自分は何を持っていきたいのか、年の瀬のこの時だからこそ、改めて足を止めて思いめぐらすのもよいのかもしれない、そのように考えました。

“one after another”, 2017, 727mm×1818mm, acrylic on canvas

exhibition hall