公募展『ACTアート大賞展2019』


Competition Exhibition ”ACT ART AWARD 2019″

会期:
3月15日(金)〜3月21日(木・祝)

会場:
The Artcomplex Center of Tokyo(東京)

from Mar. 15 to Mar. 21 2019
Venue: The Artcomplex Center of Tokyo(Osaka, JAPAN)


 自分たちが生み出し育てたはずのものなのに、さまざまな考えによって増強された、概念、理想、思い込み、社会常識や同調圧力といった、目に見えない「想像の産物」は、私たちを暮らしやすくすることもあれば、襲いかかってくることもある。私はそれを受け入れたり、抵抗したり、都合よく利用したり、知らないふりをしたりして、それらとのバランスを取りながら生活していて、自分のうちにも「想像の産物」を育て、自分のうちでもバランスを取っている。
 私はバランスを取るうちに、同じ物事についても、ある時は「それはダメだ」と言い、また別のある時は「それで良い」として処理している。その仕分けの理由なんて大したものではなくて、めんどくさかったとか、助けを期待できる人がいたから、あるいはいなかったからとか、不利益になると思ったからとか、そうした自分のずるさ、弱さによるもので、それらを隠しておくためになんとかそれらしい大義をどこかから持ってきて、「だからこうしておくのがいいんだ」と自分を慰めている。
 「本当の理想はこうじゃないか」と自分の口で語られることと、最終的に自分が決めて実行している諸々の言動が合致していないことがしばしば自覚されて、自分のこの状態が、何か間違えていたり、不完全であったりするのではないかという引け目がある。それとは違う「完全な人間」というあり方がどこかにあるのではないか。それと同時に、「合致していない」というズレが自分に自分自身というものを知らしめるのかもしれないし、バランスの取り方こそが自分というものなのか。
 いつかそうした不一致さ、不完全さから脱却する時も来るかもしれないが、もしそれが一つの理想だとしても、今はそうでないし、そうでないなら、今あるこの状態が全てであって、そうなると、今のこの不完全さや不一致の不快さがあることは、私にとって完璧な状態のための一つの要素なのかもしれない。

“perfect”, 2019, M20(727mm×500mm), acrylic on canvas